第八章
「……お前、は」
ファルコは握った手に力を込める。
「教えてあげようか」
はっと気付いたファルコが顔を上げると、次の瞬間フォックスは握られた手を引き離した上で向き合い、強引にその手首を掴んだ。
「そうだよ?」
ぎりぎり、ぎりぎりと。
「ずっと兄さんと一緒に居たんだ。正確には僕という存在の塊である魂を兄さんは大切に預かっていてくれた。当然でしょ。大好きな弟なんだから」
さあっと血の気が引いていくのを全身に感じて。
「それでもそれなりに限界はあるよ。ひとつの体に複数の魂が宿ってるなんてチートじゃん。二重人格とか、そういう類ならともかく」
フォックスはファルコの手を扱い、するすると自身の喉元へ誘導する。
「分かっただろ。僕にはカラダが必要で、その為には兄さんがもう少し頑張らないといけない……もちろん、体にもそれだけの負荷がかかる。魂一個がそれに耐えられるだけの保証がないから申し訳ないながらもこうやって体を借りてんの」
――人肌。
「疑わしきは排除せよ、なんてゲームなんかじゃよくある台詞じゃん」
不意に影を差す。
「でもさ、止められる?」
まるで首を絞めてみろといった具合に誘導したファルコの手を、自身の手を上から重ねてぎりぎりと絞め上げるように力を加えながら。
「出来ないよねえ?」
狂気の瞳が、開く――