第八章
不意に時間が止まるような感覚を覚えて。
え、なに言ってるんだこいつ、と。それは一種のお笑いのネタとしてではなくただ単純な疑問だった。彼は、何処から自分たちを見つめて――
刹那。背後に佇む屋敷の扉が、何の前触れもなく凄まじい音と共に破壊された。
「……!?」
舞い上がる砂煙の奥から人影が歩いてくる。誰も言葉なく見張っていると、緊迫した雰囲気とは裏腹に小さく欠伸を洩らして見知った人物が姿を現した。
「うるさいなぁ、もう」
狐の耳がぴょこんと跳ねる。
「人がせっかく気持ちよく眠っていたのに」
――フォックスだった。
それにしては態度も口調も異なる。当然のことながら彼と同じチームに属していたファルコは誰よりも違和感を感じていた。口を開いた、がそれよりも早く。
「……あっ」
マスターの存在に気付いたフォックスはぱっと瞳を輝かせた。
「“兄さん”!」
確かに、そう呼んだのである。
「聞いてよ兄さん。こいつら酷いんだよ?」
嬉々として横切ろうとするフォックスを目に、ファルコは思わずその腕を掴む。
だがしかし、それは何の躊躇いもなく振りほどかれた。
「――触るなって。言ったはずだろ」