第八章
――誰かが小さく悲鳴を上げて、息を呑んだのは確実だった。
「左目、が」
「……無いのか?」
ぽっかりと開いた空洞のアイホールの奥に広がる、暗闇。
「冗談だろ?」
「なんで左腕が」
二の腕の半ばから見る影もなく失われた、左腕。
「単なる負傷だったはずじゃ……」
衝撃的な光景を目に、誰も攻撃の手を止めていた。
そんな最中でも当事者のマスターは顔色ひとつ変えない。その場に口を閉ざし立ち尽くす、ただそれだけでありながら不穏な空気を醸し出している。
「今更じゃないか」
マスターは変わらず無表情で、且つ呆れたように口を開いた。
「左目と左腕は使用できなかった。……いや」
嘲るように、小さく笑って。
「できるはずもなかった、が正しいか」
挑発とも取れる発言に乗せられて、メンバーの内数人が構える。
「まさかそれだけのハンデがありながら、この俺に傷ひとつ付けられないとは」
「嘘よ。現に貴方は、頬に傷を受けたじゃない」
サムスが睨むと、マスターはきょとんとして。
「……あの程度で傷を与えたつもりになっていたのか」
くく、と口角を吊り上げる。
「俺はまだ立っているというのに?」