第八章
刹那。マスターの死角から半円を画くようにして右手へと回り込み、奇襲を仕掛けてきたのはロイだった。死角である左側から攻めることで注意を向けさせた後、不意を突いて視界の“範囲内”から攻撃を仕掛けようという極めて大胆な作戦である。
「ちっ」
だがしかし、元々右手からの攻撃はそう安安と通らない。
ひと振りは呆気なく白銀の剣に阻まれた。――初めと同じ光景。マスターへの攻撃を通すまいとぎりぎり押し合う。けれど作戦とはあれに留まらなかったのだ。
「失礼っ」
ロイの背後より飛び出して。
「お邪魔しまーす」
陽気な声とは裏腹に、よく似た姿で剣を振り下ろしたのは。
「っ……!」
カービィである。
直接的な攻撃を今日初めて許したマスターは、包帯の布切れをその場に散らしながら後方に飛び退いて距離を取った。直後にサムスやファルコによる銃弾をお見舞いされるが、見えない壁がそれらを阻んで追撃を許さない。
「……やったか?」
「定番だねぇ」
剣を軽く振るって構え直すも、カービィはばつが悪そうに答えた。
「……掠めただけだよ」
マスターはふらりと体勢を立て直す。
そして左頬の赤線を何気なく右手の親指で拭った。……するとどうだろう、全員の見間違いでなければそれは傷痕諸共無くなってしまったのである。
……はらり。
左目を覆っていた包帯が。左腕を抱えていた包帯が。垂れて、落ちる。