第八章
マスターの右目に青く光が灯ると、リムとドンキーの体は見えない壁に押し出されるような形で弾き飛ばされた。すかさずマリオとルイージが飛び出し、身を呈して受け止める。入れ替わるようにピーチとゼルダが前に出てきて両手を前へ突き出し翳す手のひらからそれぞれ桃色と金色の光を宿した矢を射出。
計三発。しかしマスターはそれらを尻目に、右手の指を鳴らすと自身へ辿り着く前に見えない法撃によって撃ち落としてしまった。嘘、とゼルダも声を洩らす。
「まだだわ!」
そう叫んだのはサムスである。
「彼には死角があるもの!」
――左目と左腕の負傷。
「利用するのよ!」
躊躇なく構えられた銃が乾いた音を鳴らす。
走る銃弾は正しく獲物に狙いを定めて、その左頬を掠めた。じわりと滲む赤の一線にその死角が確かなものであると、戦士たちそれぞれの胸に希望が宿る。
「マルス!」
ぎりぎりと張り合っていた剣を返して、ロイは後方に飛び退いた。
アイコンタクトを交わす。ここで声に出せば悟られるのは当然、目前にしてそんな生き恥ともなろう馬鹿な真似はできるはずもない。
「くっ」
マルスも同じように剣を返すと、マントを翻し素早くマスターの左、すなわち死角へと回り込んだ。……左腕は負傷している。防がれたところで反応は遅い。
「……、」
薙ぎ払ったがすかさず、白銀の剣が受け止める。もう一方の剣が振りかざされるがそうはさせない。鳴り響く銃声。構えているのはファルコである。
「はっ」
剣を引いたが続けて打ち込む。何度もマスターの死角へ回り込みながら、連撃。
「無駄だと、」
マスターが小さく口を開いたがそれよりも先。
「……思ったかい?」
青い髪を揺らして青年はにやりと笑みを浮かべる。