第八章
沈黙を破るように。マリオとルイージがそれぞれ手を翳して構え、その脇からロイとマルスが剣を抜きつつ駆け出した。間もなく赤と緑の炎が渦巻く柱となり放出、進んだ先で交えて絡み合い、獲物に突撃すること約二秒。
凄まじい音が鳴り響いて砂煙が派手に舞い上がった。対象の姿は煙に包み隠されていたがそれも長く続くことなく、煙は中から弾けるようにして晴らされる。
「な、」
――無傷。
「ロイ!」
怯むなとばかりに叫ぶ。
特殊を無効にするのであれば物理はどうだ。挟み撃ち、そしてこの距離なら。
「……、」
――躱せるはずが。
「なかなか速いじゃないか」
手応え。
「……お見事」
だがそれぞれの剣が打ったのはマスターではなく、直前に生成された正真正銘白銀の剣だった。それも意思を持つかのように、ぎりぎりと押し合って譲らない。
「ん?」
続け様に真っ正面から奇襲を仕掛けてきたのはリムとドンキーだった。小柄でありながらトップクラスのパワーを競う彼らの攻撃さえ、直前で見えない壁に阻まれて惜しくも通らない。ここまで、マスターは全くの無傷である。
「……やれやれ」