第八章



時間はほんの少し巻き戻り、屋敷前。


ぽつり、ぽつりと。ひと粒がちょうど頬に落ちてマスターは空を見上げた。

朝から気持ちのいい天気とは言い難い空模様だったが、とうとう降り出したようだな……全くどうしてこんな気分の良い日に、世界というヤツは。

「ん?」

かと思えば。歓迎していないのは彼らも同じらしい。

「……マスター」

屋敷から出てきたのだ。ぞろぞろと。

お出迎えなんて可愛いじゃないか。一年も近く一緒に過ごしてきてこんなに手厚い歓迎を受けるなんて感動的だ。絆とやらもようやく目に見えて、

「フォックスに何をしやがった」


外出先から戻ってきたマスターを窓越しに捉えたのはファルコも同じだった。

誰よりも先に飛び出し、一度はラディスを思い出して躊躇うも気付いたその男との視線を交わした途端に考えは掻き消され、発言に至ったという次第である。

「やれやれ。十代ならもう少し言葉に気を遣ったらどうだ」
「るせえ、質問に答えろ」
「覚えがないな」

ファルコは眉を顰める。

「誤魔化せるとでも思ってんのかよ」

これがシミュレーションゲームなら何処で信頼度を落としたのやら。

「……フォックスは」
「関係ないだろ」
「俺の部屋で眠らせておいた」

そう答えて出てきたのはマリオである。ファルコは小さく舌打ちをこぼして。
 
 
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