第八章



刹那、何かが派手に割れた音が廊下に響いて。

「あーっ!?」 

追うように、叫び声。

通り掛かったリビングからだった。何事だと視線を向ければ、床には見るも無惨な姿へと変わり果ててしまったゲーム機が転がっている。

リム、ドンキー、ユウの三人が青ざめた顔を、リンクだけは呆れたような苦い顔をしてゲーム機を見下ろしている。大方、次は俺だ私だと取り合いをしていたところをうっかり手を滑らせ落としてしまったのだろう。

「……!」

その時だった。見覚えのある形状にマルスはゆっくりと目を開いて。

「『Game & Watch』!?」


――それは。

決してあってはならない悲劇だった。


「わ、わざとじゃないもん」
「そんな理由で済まされる問題じゃないだろ!」
「落ち着けってマルス」
「いやこれ落ち着けないでしょ」

『Game & Watch』といえば、ゲムヲの住んでいたゲームの中の世界。

それが壊れてしまったということは。


ゲーム内のキャラクターである彼の消滅を意味する――


「……ゲムヲ」

気付けば、彼が立ち尽くしていた。

持っていたスケッチブックを、ぽとりと床に落として。
 
 
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