第八章



クレシスは部屋を後にして、一人廊下を歩いていた。

行く宛もない。ラディスのことだ、既に屋敷を飛び出しマスターを探す為に司令塔へ向かったことだろう。追いかけるつもりにもならなかった。


あいつは。


「クレシスじゃん」

声をかけてきたのはロイだった。カービィとマルスもいる。

仲良くなったものだ。今ではこの三人が一緒にいる場面をちょくちょく見かけるようになった。相変わらずカービィとマルスの相性は宜しくないようだが、喧嘩するほど何とやらとはよく言ったもので。たまに任務も一緒にこなしている様子だ。

「どうしたんだよ、浮かない顔して」

普段ならからかってくるはずのカービィも今回はただ目を見張るだけだった。

ロイが積極的に話しかけるのを傍らで聞いている。事が事なのだ、気は進まないがいずれ知ることになる。クレシスは歩きながら簡単に説明することにした。


「……、」

当然のように沈黙が流れた。

それでも、あの生真面目なフォックスがそんなことをするような柄ではないことを誰も皆が知っている。……だからこそ。


信じられるはずもなくて。


「……マスターのことなんだけど」

その時、カービィが初めて口を開いた。

「いたみたいだよ。……双子の兄弟」
 
 
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