第八章
「ぇ、かはっ……」
小さく声を洩らしたのも束の間鮮血が吐き出される。
ハゼルの後ろで銃を構えていたのは――フォックスだった。しかし狼狽えない、彼はゴーストタイプのポケモン。不死の魂を持つ彼らにとって肉体とは脆くとも再生など容易く、振り返る間にその傷口を塞いだ。が、三発目が額を撃ち抜く。
「っ……この」
反動で首を反らしたが、向き直った頃にはもうフォックスの接近を許していた。
――ニィ、と口角を吊り上げ左目には赤の灯火。恐怖による一瞬の硬直が側面から襲いくる蹴りを避けきれず、ハゼルは床に薙ぎ倒されて。
「ッが」
仰向けになったが直後、腹部を酷く踏み付けられる。
向けられた銃口、構えた男のその表情のなんと恐ろしいことか。
「……あはっ」
死への恐怖とは果たしてこんなものだっただろうか。
「死んじゃえよ、バーカ」
蹴って、銃声。踏み付けて、銃声。
幾度となく再生されるその体からはまた幾度となく鮮血が飛び交って、ラディスを含む三人はその悲惨な光景に暫く見惚れていた。
「……ぁ、フォックス……」
聞こえていない。
「や、めろ」
届いていない。
「あっはははは! あっはははははは!」
どうして。
「フォックス……!」