第八章
その刹那、ずんと室内の空気が重くなった。
続けてハゼルの足下より現れた群青の光が周囲をぐるぐると尾を引きながら彷徨った後、やがて波紋のように放出。ファルコはクレシスとラディスを背後に追いやりつつリフレクターを起動。咄嗟だったとはいえ的確な判断だった。
なんとそれまで動向を見守っていた一般客が次々と地面に倒れていったのだ。
種族がゴーストタイプのポケモンであるが故、まさか魂を抜き取ったのではないかと焦ったが事実そうではないらしい。
「あはっ」
ハゼルは歪みある笑みを浮かばせてその一歩をゆらりと踏み出す。
「これだけのニンゲンが身動きひとつできないなんて……」
警戒を募らせるその一方。彼はかくんと首を傾げた。
「とっても素敵じゃありません……?」
――そうか。催眠術。
パニックに陥り逃げ惑う一般客でも、自分の命の為なら幾らでも言葉が通じる余地は窺える……しかし強制的に深い眠りに落ちてしまったのだとすれば別だ。
「……それでは」
迅速に。対処しなければ。
殺される前に殺さなきゃ。
「楽しいパーティを――」
発言の途中で言葉を切らす。どぱん、どぱんと二発の銃声。
突如として襲った銃弾が背中から皮を肉を突き破り、真っ赤な血を噴き出す。その光景こそ一般客が催眠術の効果など得ず見守っていたらどんな悲鳴が上がったことだろう。きっと恐らくそれこそ彼が口にこぼしたパーティのように。