第八章
店内は大手とだけあって広々としており、今日も今日とて変わらぬ人々に銀行員がてんてこ舞いしていた。冷房による風が涼しい。……本当に。
本当にここが、あの連続殺人グループのアジトなのか?
「で、どうすんだよ」
「職質吹っかけたところで下手すりゃ通報、警察沙汰だ」
さらりと言うが大事である。
だがクレシスの言うことも一理あった。近頃の警察という生き物が如何に自己中心的で融通の利かない子供の集団だってことはここ半年で十分に理解している。
しかし、だからといって可能性に溢れたここを調べずじまいでは。
「借りるぞ」
「は?」
そう言ってクレシスがファルコの横を抜けつつホルスターから奪い去ったのは――拳銃である。おいおいちょっと待て、まさかまさかと目を見張っている内に。
「お待たせ致しました。番号札三番でお待ちのお客様、」
クレシスは窓口の女性の額に。
「――強盗だ。金を出しな」
銃口を押し付けて。
「きゃああぁあああ!」
当然。必然。途端に響き渡る――悲鳴。
あっという間に騒ぎは広まりを見せ、人々は銀行員も含め逃げ惑った。クレシスは視線を走らせる。そこでようやく彼の狙いが読めたのだ。