第八章
レイアーゼ都市西地区、繁華街。
「……マジかよ」
見上げたファルコはぽつりと呟いた。
今度の任務で出動するラディス、クレシス、フォックス、ファルコの四人はマスターの示すターゲットのアジトを目前に呆然としていた。それもそのはず、アジトは如何にもといった廃工場などではなく西地区を代表する大手の銀行だったのだ。
「おいラディス。てめえ迷ったんじゃねえだろうな」
「いくら俺だって赤線引いて目印まで付いてれば迷わないよ」
地図を片手にそう答えるラディスは、どうやら本気で言っているらしい。
「……入ろう」
そうして積極的に進み出たのはフォックスである。まるで朝の不調など無かったことかのように。まあ、なるようになるのだ。ラディスもファルコも思い直す。
「これで違ったら誰のせいか分かってんだろうな」
「そ、それはマスターに言ってくれ」
開いた自動ドアの先へ進むフォックスの後を追う。
……ふと、ラディスは振り返って。
「クレシス?」
ぱっと目の色を変えた。
気のせいか、フォックスの背中を睨んでいたような。
「……何でもねえよ」
クレシスはいつもと変わらぬ態度に戻ってラディスの隣を抜ける。
「さっさと済ませるぞ」