第八章



何だか頭がぼうっとしている。

妙な悪夢にうなされていたその影響からだろうか。着替えを終えて洗面所を後にしてからもフォックスの顔色は一向に優れないままだった。

足が重い――まるで何かに取り憑かれたかのようなそんな感覚に陥りながら、声をかけずとも密かに身を案じて視線を送り気にかけるファルコと共に、フォックスはようやく食堂へと足を踏み入れる。その瞬間、強烈な違和感が襲った。

「……え、あれ」

フォックスは酷く困惑した様子で声を洩らす。

「おっ」

ロイが振り返った。

「ようやくお目覚めだな」
「ラディスより起きるのが遅いなんて、ビョーキでしゅよっ!」

続けてユウやリムが迎えるが、そうじゃない。

「い、言うなあ……」
「一字一句誤りのない事実だろ」

……違う。

「フォックス?」


何を忘れている? 


「――ラディスなら未だしも」

ふと口を開いた、声の主はそう言ってテーブルに頬杖をついた。

「お前みたいな生真面目が寝坊とは珍しいじゃないか」
 
 
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