第八章
◆第八章『カウントダウン』
あれから二ヶ月が経った。
「ふあ……」
何もない平穏な日々が続いている。
それは本来ならとても喜ばしいことなのだが、だからといってこうも同じことの繰り返しではいくら命懸けの仕事といえど体がだらけてしまう。
戦士にとって平和とは、皮肉にも毒同然なのである。
――こんな夜中に目が覚めるなんて。
洗面所を後にしたフォックスは廊下をのろのろと歩きながら、途中目にした時計を思い出してそんなことを心の中でぼやき、大きく欠伸を洩らした。
二階には洗面所が無いのである。この人数に対してこればかりは不服だ。
「……?」
フォックスは疑問符を浮かべて凝視した。
明かりだ。それも、あれはマスターの部屋だろうか。
前々から耳にしていたがまさか本当にこんな夜更けまで起きていたとは。屋敷の主ともあろうものが感心しないな。ここに来る以前は司令塔の研究部に属していたというのもあって、研究の癖というか趣味というか……それだけに始めるとなかなか手を止められないというのは何というか分からない気もしないけど。
いや、それでも夜更かしは体に良くない。そもそもの話、趣味の範囲である研究に打ち込めるほど暇な人間というわけでもないのだ。
誰かさんのようにバランスを失って大事な時にへまをしたり、睡魔に襲われているようでは困る。まだ起きているようであれば注意しておかないと……