第七章
荷物をまとめたキャリーバックを手に外へ出てくると、そこでは既にクレシスを含め全員が待機していた。珍しいことに、誰一人として文句を口にしない。
……大切な人なら尚のこと。別れを惜しむのは当然なのだ。
「頑張ってね」
ルーティを腕に抱きかかえたルピリアが微笑する。その何でもない笑みの中に本心を隠しているのだと思うと、きゅんと胸が切なくなった。
けれど、自身もそれだけは押し殺して。ラディスはそこで待つ仲間たちの元へ。
「宜しかったのですか?」
「飛行機の時間なら気にすることなんかないのに」
ラディスは首を横に振った。
「……行こう」
その表情は影に差して見えなくて。
「主人を宜しくお願いします」
間を縫って集団を抜けた直後のことだった。
深々と頭を下げるルピリアを、ラディスを除く全員が見つめて。それ以上の言葉はなく、それだけの言葉だったが彼女の直向きな想いは痛いほど胸に染みた。
大切な人を戦場へ送り出す恐怖とは、どれだけのものだっただろう。
「いってらっしゃい」
約束するよ。
家族がいるこの場所へ。
何度でも帰るから。
「うん」
振り返った、ラディスはにっこりと笑って。
「……いってきます!」
透明な雫がなだらかに頬を伝い、ぽろりとこぼれ落ちた。