第七章
「忘れ物はない?」
……夢のような時間は。
名残惜しい。もう少しのんびりしていてもよかったかもしれない。けれど自身が特殊防衛部隊率いるリーダーを務めている以上、駄々を捏ねてはいられないのだ。
「大丈夫だよ」
次の日の朝のことだった。
三日、というのは存外早く過ぎてしまうものだ。何をしよう、何を話そう、何処かに連れていくのもいいなと内心はしゃいでいたところもあったがやっぱりそういう考えの元では余裕を持って一週間くらい休みを貰わないとどうにもならない。
「ぱぱー!」
玄関先で靴を履いていると、目を覚ましたルーティがどたどたと駆け寄ってきた。
ぎゅう、と腕に抱きついてしまうのでラディスは目を丸くして。
「ルーティったら。パパを困らせないの」
「いやっ! やだやだやだ!」
どうやら、前回見送った後でちっとも戻らないものだから今度こそ行かせてやるものかと止めに来たらしい。きゅうん、と胸が締め付けられてしまうが、ここは。
「ルーティ。パパ、今度はすぐに帰るから」
空いた手で頭を優しく撫でると、腕を捕まえる力が緩んだ。
「……ほんと?」
「週に一回くらいは仕事のついでで顔を出すよ」
「ちょっとそれ……大丈夫なの?」
「それがいけないってルールは無いしな。仕事も殆どが地上界だし」
ルーティは言ってる内容がよく分からないといった様子だったが、それでも納得はしてくれたのかぱっと腕を解放した。
「やくそくっ!」
そう言って小指を差し出すルーティに、ラディスはくすっと笑って応えた。
「……約束」