第七章



……今の声って。

「ラディス?」

砂煙に埋れた人物にそう声をかける。

酷く咳き込みながら。その人物は這うようにして砂煙の中から出てきて。

「ど、どうも……」

予想通りの人物の登場にフォックスはくすっと笑みをこぼした。


廊下の縁に並んで腰を下ろし、ラディスは衣服に付着した砂を払うとようやくひと息ついた。フォックスがくしゃみをすると、ラディスは小さく吹き出して。

「……それより、どうしたんだ?」

フォックスは塀を見遣る。

「あんな所から入ってきて」

すると、ラディスは頬を掻きながら苦笑して答える。

「正面から入ろうにも門が閉じていたんだ。だからあれしか思いつかなかった」
「連絡すればよかったじゃないか」

そしたら誰かが開けたのに、と正論を述べればラディスは更に苦い顔をして。

「……でも、見つかったのがフォックスでよかった」

俺? 疑問符が飛び交う。

「フォックス」

そう呼びかけられて顔を向ければ、ラディスが接近していた。え、ぁ、と声を洩らしている間にその距離は吐息のかかる目と鼻の先。

「ちょ、」

ちょっと待てええぇえ!? 
 
 
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