第七章
その日の夜のことだった。
二日目ともなるとこれまでのぎっしり受けてきた任務と、変わらず今日も遊び呆けた疲れがどっと押し寄せて初日よりこの道場の一室は静かだった。
ガールズトーク、というやつだろうか。女の子のひそひそと話す声が聞こえるがそれほど気になるものでもなく。既に消灯はしているが、夜目がきくフォックスは窓からほんのり優しく差す月の明かりを利用して昨夜に引き続き読書をしていた。
……ふと、栞を挟んで本を閉じる。なかなか眠くならないので気分転換に道場の中を探索しようと考えついたのだ。庭園に面している廊下もある。
確かあれは枯山水とかいったっけな。……
夜風が涼しい。こっそり部屋を抜け出して廊下を歩きながらそう思った。
――明日になればまたいつもの生活が戻ってくるのだ。戦いに明け暮れる、では少々聞こえが悪いがあながち間違ってもいない。
「……ん?」
枯山水を眺めながらゆっくりと歩いていたところ、向こうの塀をよじ登ってきたのか何者かが今まさに降りようとしていた。生憎、拳銃は持ち合わせていない。
「誰だ!」
そう声を上げるのが精一杯で。
「へっ」
と、間抜けな声で応えた人物は驚いたのかぱっと手を離して、
「ぅおあ!?」
真っ逆さまに墜落。砂煙が一瞬にして舞い上がった。