第七章



その頃、ラディスはとある店に来ていた。

店というのはだいぶ小洒落た感じで、落ち着いた雰囲気に女性同士や或いはカップルといったペアが目立つ。その中でラディスはある商品と睨めっこしていた。

ふと、この店に入る前注目した貼り紙が持ち帰り用のチラシとして傍に重ねて置いてあったのでちらり、目を向ける。こういったサービスというものは実はそう多くないのだ。なんだかんだ高い金をぼったくる店はあるのだが、ここは良心的だし。

……それにしてもどれにしようか。

唸り、悩むこと約十分。これならしっくりくるだろうとラディスは手を伸ばしたがそのタイミングで別の手が伸びてきた。ぴく、と反応をし引っ込めて。

ぱっと反射的に目を向けてしまうと何とまあ厳めしい顔つきの男が此方に鋭い視線を返してくれた。いや、そう見えたというだけで実際は怪訝そうな顔で眉間に皺を寄せつつ振り向いただけだったが。ラディスは押し負かされてふいと目を逸らす。

「……店員」

男は口を開いた。購入するつもりのようだし、退散しよう。

「此方をご購入ですか?」
「そこの鼠だ」

背中を向けてそろりそろりと歩き出していたところ、ぎくりと肩が跳ねる。まずい自分のことだ。まずいまずいまずいプラズマ、と慌てていたところ。

「お客様、プレゼント用でよろしかったですか?」
「あっそれでお願いします」

変わらない様子の店員にまんまと乗せられてしまって。

「かしこまりました」

いや、商品に誤りはないし構わないんだけど。

気付くと男はいなくなっている。気を遣わせちゃったかな。それにしても灰色の狼ということは個別種族はグラエナだったのだろうか。

人は見かけによらないなぁ。

「……すみません。貼り紙を見たんですが」
 
 
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