第七章
――次の日のことだった。
「いないんですか?」
フォックスは目を丸くする。
朝と昼のちょうど間。迷惑にはならない程度の早い時間帯に家を訪れてみればこれである。出迎えたルピリアは困ったようにこくりと頷いて。
「何も言わずに出ていっちゃうんだもの。どうしたのかしら」
妻のこの人が知らないということは、事を起こすには余程直前で思いついたものだったのだろう。いや、それとも彼の場合は単純にその目的とやらにしか意識が向かなくて、誰かに伝えるも何も忘れていただけなのかもしれない。
「わぁー! わんわんだっ!」
フォックスがそれで暫く黙り込んでいると、ルピリアの後ろからルーティがひょこっと顔を出した。フォックスは気付くと膝に手を置き、身を屈めて。
「わんわんじゃなくて、こんこんだぞ」
とは教えてみたが聞いてない。
「えへへおぁよー!」
……可愛いからどっちでもいいか。
「そうだ。せっかくだからルーティと遊んでもらえますか?」
「俺でよければ構いませんよ」
「僕たちも一緒に遊んでほしいなぁー?」
「うわああっ!?」
いつの間に。
後ろから囁きかけるように聞き覚えのある声が言うので振り返ってみれば、そこにはカービィ“達”がいた。どうやら自分はつけられていたらしい。
「気にしてますねぇフォックスさん。もしかしてラディスのこと」
「あら。それって巷で噂の」
「奥さん違いますから! 違いますからね!」