第七章
「へぇークレシスって親バカだったんだー」
愛息子に頬擦りをしていたところ、後ろでぼそっと呟いたのはカービィだった。
「な、ぁッ」
普段なら声を荒げるところだが何せ愛しい息子が見上げている。ぐっと言葉を呑んでスピカを抱き締める。クレシスは頬を染めながらきっと睨みつけて。
「……悪いかっ」
でっ……デレた……!?
「可愛いんだから仕方ないだろ」
クレシスはひょいとスピカを抱き直す。
「確かにスピカ君は可愛い……」
そこへ現れたのはラディスである。何となく展開が読めた。ルーティを腕に抱いて悪役顔負けの悪い顔。クレシスはばっと振り返って顔を顰める。
「だが、うちのルーティも負けていないぞ!」
やっぱりか。
「うっせえバカ親! 自分の子供の方が可愛く映るのは当然だろ!」
「いやぁ、それだとしてもルーティは世界一可愛いからな!」
「スピカの方が世界一、いや宇宙一だ!」
双方我が愛息子を巡ってのくだらない論争が始まった。案外見慣れた光景だったのだろう、ユウとリムは白けている。メルティに関しては「まあまあ」と微笑んで、その光景を見守っていたが。でもまあ確かに、くだらないが和やかな雰囲気だ。
「ねぇね、ねぇね」
それまできょとんとした様子で見上げていたルーティとスピカだったが、言い争う二人へ不意に呼びかけた。ぴし、と指をさして。
「ぱぱのほお、かぁいいっ」
えっ?
「かぁいいよっ!」
……どうやら子供たちには。
自分を執拗以上に愛でる父親の方が可愛く映っていたようだ。