第七章



「よ、よかったな! 第一印象はばっちしだぞ!」
「えっ……え?」
「ほ、ほら! 耳だよルーティ!」
「あだっ! あだだっ!」

不意に現れて両側に付いたロイとマルスが口々に、マルスに限ってはフォックスの狐耳を後ろからくいくいと引っ張って。何を必死になっているのか彼らは。

……かと思えば、はしゃぐルーティを見て頬を緩ませている。どうやらその愛らしさに心奪われたらしい。いや、だからってこれ、結構痛いんだけど。

「抱いてみるかい?」
「へっ!?」

ラディスはくすっと笑って。

「わんわんー」
「ほら。ルーティも気に入ってるみたいだし」
「いや狐なんだけど……」

それにこういうのは泣かれるって相場が決まってるし。

子供は確かに可愛いけど、どうも泣かれるのだけは慣れない。耳に障ると言ったら聞こえは悪いが否定はできないし。何だかんだいって子供は親から離れたく、

「って、うわああ!?」
「そんなに驚くことないじゃないか」

いつの間に。フォックスが色々と考えを巡らせている隙にラディスは肩車させようとルーティを持ち上げて既に肩の上に足を掛けさせていた。おいおい、二歳の我が子にすることじゃないだろうと突っ込みたいがラディスらしい発想というか。

「っと。ほぅらルーティ、高いだろー?」

ラディスが手を離したのでフォックスは慌ててルーティの足首を掴んだ。少しよろめいたが、マルスがルーティの背中に手を回し、支えて。

結果、何とか体勢を持ち直したルーティはフォックスの頭にしがみついた。
 
 
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