第七章
「……あの時は少し空港に早く着きすぎてしまったんだ」
フォックスが再び歩き出したのを見て、少し先まで歩いていたファルコとラディスは少し待って彼が隣に通りかかると一緒に歩き出した。
「俺もあれで緊張してたからな。気分転換に森の中を歩いていたら……まあ、正直少しだけ迷ったんだけど」
おいおい、とファルコが突っ込む。
「そしたら見つけたんだ。あれは向日葵だったかな」
「向日葵畑?」
すぐにラディスが聞き返す。
「……やっぱり知ってるんだな」
「森の中に住んでいれば誰でもってわけじゃないさ」
フォックスは疑問符を浮かべる。
「俺と家族の秘密の場所ってところかな」
「ええっ?」
ラディスは小さく笑って。
「……最初は一本だけだったんだが、種が出来る度に近くに植えていたらいつの間にか凄いことになってな。今は家族で管理しようってことになってる」
「ま、てめえがやらかしそうなことではあるな」
腕を組んで、ファルコ。
「あれだけの向日葵をよく……」
「はは。俺より、妻の方が几帳面だからな」
それから少しの沈黙が訪れた。
気まずい、というわけではない。ただ、優しい風が吹き抜けていく。
「向日葵が好きなのか?」
「……ああ。だから」
ラディスはいつものような変わらぬ笑みで、続けた。
「俺が死んだら、あの辺に墓でも建ててくれ」