第七章



……あっ。

フォックスはふと立ち止まった。続けてファルコ、最後にラディスが振り返って足を止める。どうした、とファルコが声をかけたがラディスは気付いた。

川のせせらぎ。透き通った先の世界には小さな魚が泳いでいる。

水面に太陽の光が反射すると、ラディスの頭の中にあの時の記憶が抜擢された映像となって、この静かな川のようにゆっくりと鮮明に映し出されて流れ込んできた。


DX部隊入隊のあの日。ちょうどこの場所で、子供が溺れていて。助けたはいいが、今度は自分がうっかり足を滑らせて。腕を掴まれて。


顔を上げると視界にフォックスが映り込んだ。

「……変わらないな」

フォックスはふ、と笑みをこぼして。

「む。いい意味にも悪い意味にも聞こえるんだが?」
「前者と取ってもらって構わないよ」

一枚上手の対応にラディスは言い返す言葉もなく、ぐぬぬ。

「おいおい。俺を外して世間話たぁ大した態度だな」
「そんなつもりは……」

言いかけて、あることを思い出す。

「なあ、フォックス。どうしてあの時、あんな所にいたんだ?」

集合地点がメヌエルの空港であったとはいえ、子供を助けた直後に急いで走り去ってしまったところを見ると。まさか、本当に迷っていれば走っても走っても目的の空港に辿り着けはしなかったことだろう。それなら、何故。
 
 
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