第七章
森林都市メヌエルが見えてきた。
誰かさんがからかうようにして例えたように、都市という割には車もビルなどが立ち並ぶ都心部以外はそれほど走らないし、一見すると森ばかりの緑溢れる物静かな地である。だがしかし、ポケモンにとってはそれこそが街なのだ。
人間にとっては足をすくわれるだけの沼も、迷うばかりの深い森も、暗がりの洞窟もただ静かに波打つだけの湖も、彼らにとってはその全てが住処なのである。
誰も自然と共に生きている――譲り、譲られ、助け合いながら。
「あの辺に停めてくれ」
ラディスが指差して指示すると、フォックスとファルコは素直に従って。
草地にゆっくりと降り立ち、翼を緩やかに変形させて停止。ラディスは振動させないように慎重に下りて、数歩進み出た先で森の空気を吸い込んだ。
振り返り、空を見上げる。太陽の光に、目を細めて。
――依頼の関係で何度か地上には降りているが、通算すると自分は半年もあの空の上の大都市の中で暮らしていたのか。様々な記憶が走馬灯のように頭の中を駆け巡っていく。……正直、自分がどじを踏んでいる場面しか巡ってはこなかったが。
そうか半年か。同時に半年間一度もこっちに顔を出さなかったんだな。断じて面倒臭かったからではないぞ。忘れていた、では無慈悲に聞こえるだろうが単に仕事に没頭していたのだ。不器用ではなく真面目だったということで見逃してほしい。
「……飛行機はまだ見えないな」
釣られたように隣に並んだフォックスが空を見上げる。
「どうする?」
ラディスは少し考えて、
「空港に行こう。先に行ったら誰かしら怒るからな」