第七章



天気は快晴。外出日和。

となると、ルーティもこの時間帯ならもしかしたら外で元気に走り回って遊んでいるかもしれないな。あ、転けた。泣きそうだ、どうしよう。

「……進化ってどんな感覚なんだ?」

レイアーゼ領空を抜けて、青い翼を持つ二機の小型航空機が空をゆっくりと駆けていく。向かって右側のウィングに腰を下ろし、瞼を閉じて心地よい風を全身に感じていたところ。ふと、疑問に思ったのかフォックスはそんなことを訊いてきた。

「そういやぁ姿形が大きく変わっちまうんだよな」

無線機を通じてファルコが続ける。

「で、どうなんだ。やっぱり、オメー誰だってなったりすんのか」
「まさか。進化による変化といっても、そう大袈裟なものではないよ」

うーんと唸って、腕を組む。

「まとめて説明すると、眠っている間に髪の色が変わる感じかな」
「眠っている間に進化するのか?」
「そうじゃないよ。タイミングはそれぞれ異なる」

ラディスは腕を下ろして。

「一瞬、誰? とはなるけどすぐに気付くんだ。進化に影響されて大人びたり、逆に子供っぽくなったりする人もいるけど、何というか名残があるからね」

そうして話し終えた後で、ウィングの上に手を置いて後ろに体重をかけながら空を仰いでいると二人が長く沈黙していることに気付く。分かりづらかったか。

「……ラディス」
「はいっ?」

思わず、声がうわずってしまう。

「何というか、その。……分かりやすかった」

返ってきたのは恐らく自分を褒めているであろう台詞。

「ラディスにしては上出来だな」
「もう少し推理的な何かを要求されると思ったんだが」

どうやら、普段の自分が間抜けだと二人は言いたいらしい。

「俺だって怒るぞ……?」
 
 
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