第七章
「奥さんに連絡しなくてもよかったのか?」
ここからは二手に分かれてメヌエルに向かうことになった。
それぞれの荷物を手にレイアーゼ空港から向かう正統派と、持ち前の浮遊能力や自機を使って直接飛んでいく異端派。まあ、異端なのはどちらかというと毎度お馴染み、アーウィンのウィングに跨って向かうつもりでいるラディスの方だろうが。
「そうだなあ……」
別行動のクレシスに自分の荷物を預けた後、中庭に停めてあるアーウィンの傍へ駆け寄ってきたラディスにフォックスは疑問を口にした。彼がああして考える辺り、何も考えていなかったのだろう。出掛けてる可能性もあるのに、呑気なものだ。
「ま、いなければ帰ってくるのを待つさ」
何という無計画っぷり。
考えてもみれば自分たちが泊まるホテルだって予約していないのだ。いくらど田舎なんちゃって都市――げふん。物静かな街であるとはいえ、突然、二十人程度の客が今日泊めてくれと押しかけたところでそう上手く対応してくれるものか否か。
一応、リムが「任せるでしゅ!」と張り切っていたが、子供のいうことは全くもってあてにならない。というより聞き流した程度であてにしていない。
「よっと」
そんなフォックスとファルコの心配を余所に、ラディスはアーウィンのウィングにひょいと飛び乗った。その際、機体が揺れたのでフォックスは少し慌てて。
「き、気をつけろよ」
地味に修理費高いんだから。という本音は胸の奥に仕舞い込む。
貧乏性。それなりに稼いではいるが、なかなか直らない。