第七章
――そうやって照れ臭そうに笑う彼が、嘘をつくはずもなかった。
「反面、家族にも会いたいから矛盾してるけど」
彼は優しい人だ。……それだけに。
あのクレシスが時々でも、不安そうに見つめる理由が分かる気がする。
「……そういえば。フォックスは準備しなくていいのか?」
言われて、はっと気付く。
「あ、」
俺も準備してくる、と言いかけたところで。
「ぶふっ!」
振り返ったと同時に扉に激突。その時の彼がそそっかしかったのもあるが、ちょうど扉が開いたのだ。怪訝そうに顔を覗かせたのはファルコで。
「……ここにいたのか」
「いまひた」
「おう。悪りぃ」
扉に張り付くような姿勢で応えるフォックスと、悪びれた様子もなく謝るファルコ。このやり取りから察するに、慣れているのだろう。
それにしても自分は似たような光景を見た気がするのだが。はて。