第一章
「大丈夫か!?」
すると先程ラディスのジャケットを拾った青年が、事態に気付き駆け寄ってきた。
今まさに上がろうとしていたラディスは、ちょうどよかったとばかりに子供を抱き抱え、その青年に差し出して。
「悪いけど、この子を」
頷いた青年が子供を抱き上げて近くまでやって来た母親に受け渡した、その時。
「っあ」
足下を滑らせ、後方に倒れかかる――
ぱしっ
「あ、ぶな……」
すかさず、青年が手を伸ばしラディスの腕を掴んでいた。そのまま強く引き寄せ、何とか二の舞だけは免れて。
「おお、助かった」
それだというのに、対するラディスは拍子抜けするようなこの反応。これにはさすがの青年も、小さく笑みを溢して。
「気を付けろよ」
釣られて、ラディスも笑いかける。