第七章
指摘していたのはマスターの眼帯の奥にある左目のことだった。
――どういうことだろう。これはマリオに拳で殴られたあの時の傷が癒えていないだけ、とラディスだけでなく誰もがそう思っていた。だがしかし、ダークリンクの発言から察するにその眼帯の奥、閉じた瞼の中には何も無い、ということになる。
「あまり大きな声を出すなよ」
マスターは呆れたように言って目を逸らした。
「……もう少しだ」
ダークリンクはじっと見つめている。
「血液だけであれだけの成果を得られた。……なら」
いつの間にかキーボードを打つ手は止まっていた。独り言を呟くように、左手で眼帯に触れながら。――それは今までの彼からは予想もできない。
「対となる俺自身を使えば、必ず……帰ってこられる」
影を落とした怪しい笑みだった。
「もうすぐだ……もうすぐ、会えるからな……」
パソコンの画面には彼が打ち込んだであろう研究の内容やそれに関する画像が映し出されている。青い光が、彼を余計に怪しく醸し出していた。
「ああ。もちろんだ愛しているよ……」
――こいつも重症だな。
小さく口を動かして何かを呟く。だが気にも咎めずに、ダークリンクは不適に笑うマスターを少し呆れたように見つめて、二度目の溜め息をついた。