第七章
明確な理由がないのでは断ることも出来ず。
「は、はは……」
――マスターの部屋、リターンズ。
気まずそうな空気を背負って苦笑いを浮かべる男を前に、さすがのマスターも今度ばかりは無言だった。机の上には、DX部隊メンバー全員分の休暇届が重ねて置いてある。ひと通りキーボードを打ち込んだところで、マスターは溜め息。
「前代未聞だ。リーダーが全員分の休暇届を提出しに来るなんて」
お前は何を考えているんだ、とばかりに呆れた目で見つめ、頬杖をつく。
「こ、断れなくて……」
「そこを強く言うのがリーダーだろう」
ラディスはさっと目を逸らして。
――あの時はリーダーなんて誰が務めたところで言うこともやることも一緒だと高を括っていたが、まさかこれほどまでに適任“しない”側の人間がいるとは。
だがしかし。憎めないのがまた面白い。
「……分かった」
マスターは諦めたのかパソコンの画面に目を移した。
「他を雇える金なら幾らでもある。然して問題はない」
余計なことを聞くのはよそう。確かに、特殊防衛部隊の拠点が三日も無人では世間の笑われ者だ。彼なら上手く手を回してくれることだろう。
「ありがとう」
ラディスは微笑したが、マスターは応えなかった。
「……そういえば」