第六章
クロガネが腕を横に打ち払うと、ドクドクロが構えをとった。一方でバーナード氏はじっと此方を見つめている。彼の立場が、不可解だ。
「バーナードさん……あんた、警備員なんてよくも嘘をついたな。なんでだ?」
警戒心。本来、依頼人に向けるべきではなかったのに。
マリオが訊ねるも、少しの間バーナード氏は口を閉ざしていた。ここで高笑いでも上げてくれれば敵だと確信を持てたのに、そういう訳にもいかないらしい。
「……ならば君たちはどうしてこのような真似を?」
バーナード氏はそこで小さく息を吐き出した。
「私からの依頼は死神の退治だ。ところがどうして、これでは助けに来ているようなものじゃないか。そういう意味では彼らを尊重しているよ。……彼らは」
一度クロガネやドクドクロを見遣って。視線を、戻す。
「今の君たちとは違う。本当の正義であり、我々住人の味方だ」
正義。
「そうだとも! そちらの事情は知ったこっちゃないがな、俺たちはこいつが厄介で厄介で仕方なかったのさ。ようやく始末してやれる、しかもそれがこの町の住人の望みときたもんだ。悪役が晴れて正義、正義が悪に転落たぁ笑っちまうねえ!」
……正義。
「おら、どうしたかかってこいよ。てめえらがこの死神を助けたいって意思が変わらない限り、勝利のフラグは立たないぜぇ? 何せ、正義は俺たち!」
下っ端の分際で。ドクドクロ達は調子に乗って格好を付ける。
「ドクドクロ団のモノ!」
ラディスは顔を顰めた。
「くく、ぐぅの音も出ないかバトレンジャー」
にやりと笑って、クロガネ。
「あんたらの得意分野だろう? 綺麗事を並べて言い聞かせようなんてのは」
高笑い。……耳に障る。
「ふはははっ! 逆の立場も悪くはないな。どうだ、心に響いたか? 新生正義の有り難いお言葉が胸に染みるか! さあ答えろ。バトレンジャー!」