第六章
「ふ、ぅぐ……」
「涙目じゃねーか」
数分後、赤くなった鼻を押さえて走るラディスの姿があった。マリオの指摘通りあれは相当痛かったものらしく、目尻に浮かんだ雫が今にもこぼれ落ちそうで。
「そういや肝心なとこで運に見放される体質とか何とか、クレシス言ってたっけ」
「不憫ですね……」
「一度お祓いをしてもらった方がいいんじゃないかい?」
ラディスの不運っぷりもここまでくると同情の嵐。
「痛くない……痛くないし……」
「無理すんな」
涙目で呟くラディスにマリオは哀れみの目を向けて、さらりと返した。
……さて。先程のちょっとしたハプニングのお陰で車は見失ってしまった。だがしかし幸いなことに、怪しい車が森の中へ入っていったという町の住人からの情報を得て追尾を続行。ちょっと待て、森? あれを抜けた先にあるのは廃墟の町だぞ?
「……嫌な予感がしますね」
リンクはぽつりと呟く。
「ラディス。本当に一人であの町に通ってたんですか?」
当然だ。誰かを連れ出すメリットなんてあっただろうか。それがこのメンバーの内の一人ならともかく、町の住人を連れ出すなんて以ての外で――
「そっちじゃないと思うよ、ラディス」
此方の答えを先読みして口を挟んだのはカービィだった。
「……リンクが言いたいのは」
風。草木がざわざわと音を立てる。
「つけられてなかったのか、ということだよ――」