第六章
「そう考えるのが妥当じゃないかい?」
「疑り深いねぇ。言い得ぬ事情があったのかもよー?」
「僕らの正体を知っておきながら随分と信用がないじゃないか」
マルスとカービィの意見がぶつかる中、リンクはふと窓の外を見遣った。
「さぁね。どんな立場だろうと外部の人間なら話は別なんじゃない?」
「そんなのは自分たちの都合じゃないか!」
「都合押し付けられてなんぼでしょ、僕たちの仕事なんてのは」
「……あれって」
「えっ、」
すぐに全員が注目した。……窓の外。
駐車場である。黒い車に乗り込むのは二人の男。
「な……なんで……」
なんでクロガネ役の人がバーナード氏と一緒の車に――!?
思わず言葉を呑んでしまったが、恐らく同じことを思ったのだろう。皆、目を開いて固まっていた。間もなく車が発進するのを見て、ラディスは。
「……追いかけるぞ、見失わない内に!」
一瞬、呆気にとられてしまったが正しくないとは言い切れない判断だ。スタッフには待機していろと言われたが、特にバーナード氏は不審な行動が目立つ。
前回然り。それに今度、クロガネ役の人が絡んでいるのも気になる。
「そうこなくっちゃ!」
駆け出すラディスを見てカービィは嬉しそうに声を上げ、
「ぶふっ!?」
――開くのが少し、遅かった。
自動ドアに激突したラディスはそのままずるずると。遅れて開かれた自動ドアによってラディスは非常に情けない形で、外への第一歩を踏み出した。