第六章
「クロガネ役の人が行方不明!?」
次の日の朝のことだった。
「そうなんですよ……」
――スタッフの男の話によると。
今朝、いつものようにクロガネ役の人が泊まっているホテルの一室を訪れてみるも、すぐに出てきてくれるところをいつまで経っても出てこない。まさかまだ寝ているのではないかと思い、急いで別のキーで開けたが部屋の中はもぬけの殻。
置き手紙のようなものもなければ、荷物をまとめた形跡もない。困ったスタッフ達は今日の午前の部を休止して、急遽クロガネ役の人を探すことにしたらしい。
「とにかく、今はここで待機していてください。くれぐれも部屋を出ないように」
スタッフの男はそれだけ言うと、急ぎ足で部屋を後にした。
まあ、色々な面で厳しいラグナの町だ。外部から来た人間の単独行動は此方が思っている以上に困るのだろう。思えばあの時自分たちを見つけた相手が、依頼人のバーナード氏で助かった。あれが本当に警備員だったと思うと。
「参ったな。どうするラディス」
マリオに話をふられて、うーんと腕を組む。
「……バーナード氏と話をして、ホテルの手続きを済ませよう」
「えー。午後の部はどうすんのさー」
「どうしようもありませんよ。クロガネ役の方が見つからない限りは」
誰よりも不服そうな顔をしてみせるカービィは、あれでいてショーを演じるのを楽しみにしていたのだろう。そういえば、彼は仮装が好きだったな。
「とりあえず、警備室に向かおう。そこにいるはずだから」
ラディスが言うとカービィは諦めたのかだらけた返事をしてみせた。
「へぁーい……」