第六章
ぴりぴりとした空気が否めない。
カービィはやれやれといった具合に肩を竦めて、ラディスを見遣った。
「で、どうすんの?」
ラディスははっと顔を上げる。
「まさか多数決で決めようってんじゃあないよね」
いつの間にか、全ての視線が注がれていた。
――どんな意見を並べたところで、結局はラディスが選ぶことだと全員分かっているのだろう。リーダーだから、ではない。彼だからその選択権を譲るのだ。
「……約束したんだ」
無意識の内に握られた拳。
「迎えにいくから、って」
その小指が、まだあの温もりを覚えている。
――それをどうか、忘れない内に。
うーん、とマリオは腕を組みながら迷った風に唸った。それだけの理由でも、それだけの理由だからこそ。彼らしい返答にリンクも溜め息がこぼれる。
「分かりました。ぎりぎりまで様子を見ましょう」
リンクからの視線を受けると、さすがのマルスもこれ以上のお咎めは無駄だと判断したのだろう、何も言わないままシャワールームへ。
「……早ければ明日で任務完了、か。最後くらい頑張っちゃおっかなぁ」
「お前なー。いつも頑張っとけよいつも」
「僕の役は心身共に疲れる特殊な役なんですー」
マリオとカービィは口々に解散していく。
ただ一人、ラディスは窓辺へと足を進めて硝子にそっと手で触れながら、しとしとと降り注ぐ雨たちを見つめた。何故か、不安だけが募っていく。
「……なんだろう」
野生の勘というものは斯くも恐ろしい。
ラディスの予感は的中する。思いも寄らぬ形で――