第二章
「確かにラッキーだよ、お前」
クレシスはラディスを解放して。
「でも、だからって不戦勝については絶対口出しすんな。お前がどう言おうと、この空気の中じゃ嫌みにしか聞こえねえ」
ラディスは口を閉ざし、見つめる。
「……何でラッキーかって顔してんな」
クレシスは小さく息を吐き出して。
「この空気の中で自分の全力を出し切れるか? ほぼ無理だろ。お前はこの空気に馴染んだ頃、初めて戦うことが出来るんだ」
成る程、と声を洩らすラディス。
「その代わり、勝っても負けてもお前にとっての初戦がお前の実力だ。せいぜい試合で恥をかかないよう心掛けるんだな」
そこまで言って、クレシスもトーナメント表を確認しようとラディスの元を離れた。
――違うよ、クレシス。
ラッキーなんかじゃない。例え空気に呑まれてでも、俺は一戦多く交えたかった。