第六章
ああ、そういうことだったのか。
――彼は元よりこの世界の人間ではない。『Game & Watch』というゲームの中の世界からやって来た、正真正銘ゲームのキャラクターなんだ。
それが非現実的だとか、有り得ないだとか……そんなのはこの世界に言わせてみれば今更の話だ。いやそれにしたってゲームのキャラクターとはこうも簡単に、ゲームの中の世界から出てこれるようなものなのだろうか。それならどうして――
……なんだろう。
頭の奥で何かが引っかかってる。気がする。
「……、」
多分、気のせいだ。
「助けたい人?」
頭の中で発言を解読して、ラディスは怪訝そうに返す。
「だけど何も出来ないだった」
……ここまでの会話を正すと、ゲーム&ウォッチは遠い昔から『Game & Watch』の中でゲームキャラクターとして過ごしていた。だが、何が引き金となったのか助けたい人がいて、居ても立っても居られず飛び出してきたとこういうわけだ。
「……助けたかったって人は?」
ゲーム&ウォッチは首を横に振る。ラディスは問い質さなかった。
「That child was longing to be a hero」
いきなりだな。それでもヒーローだけは聞き取れた。
「……もう同じは嫌だから。弱いの人、守るの」
その時、ラディスはようやく理解したのだ。
彼の行動の全てを。
「そうか……君はただ……」
ラディスは驚き、あっけらかんとしたように言葉を紡ぐ。
「ヒーローになりたくて。皆を守ってきた。それだけなんだね?」