第六章



「あっ」

するとゲーム&ウォッチは慌てたように瓦礫から下りて、その場を離れた。いつからここにいるのかは知らないが、まさか雨が何なのか分からなくて恐れたなんてことはないだろう。ラディスは急いでノートやボールペンを拾い集め袋の中に放り込むと、後を追いかけた。ゲーム&ウォッチは、すぐ近くの建物の中へ飛び込んで。

遅れて飛び込んだラディスは、彼の姿を見つけてほっとした。また、あの時のように影に包まれて行方を眩ませてしまったのではないかと疑ったからである。

……さて。肝心の本人は暗い建物の中、ぼろぼろになった木質のテーブルの傍で何やら屈み込んでいる。どうやら手にした何かを、じっと見つめているようだ。

「……?」

ラディスはその後ろからそっと覗き込む。

「Do not die……」


――それは使い古された携帯用ゲーム機器だった。


「……もしかして」

この世界には存在しない仮想世界。

「それが君の言ってた『Game & Watch』?」

ゲーム&ウォッチは振り返った。その時、初めて目を逸らしたのだ。

そして、こくりと頷く。


「……遠く遠くの昔からずっと」

覚えたばかりの言葉を使った彼の喋り方はまだ、たどたどしく。

「でも、助けるのがしたい人。いただから」

地面に座り込んで。ゲーム&ウォッチはゲーム機を手に、顔を俯かせる。
 
 
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