第六章
――ラディス。君が何を考えているのかは知らないけど。
あの時のマルスの声が。
――僕にしてみれば敵でしかないよ、あれは。
頭の中でエコーがかかって再生される。
――もう協力はできない。
そう思っていてくれ。
「らです」
はっと現実に引き戻される。
前髪のせいか、どんな目で見つめているのか分からなかった。けれど、その声音から心配をさせてしまったのだろう。なんとなく、そう感じたのだ。
「……そうだ」
ラディスは思い出した。
「髪、切ってもいいかい?」
思えば、彼の髪があんなにもだらだらと伸び放題だったのは、それまで誰とも関わり合いを持たず、自分自身切ろうという発想に至らなかったからだろう。
「うーんと……」
とはいえ、ラディスも髪を切ることに関しては素人だ。長い髪はばっさり切り落としてショートに、気持ち切り揃える。だが前髪はどうだろう。
ぱっつんは避けた方がいいよな。それだと何か可哀想な気もするし……