第六章
どうやら今度もつけられていないらしい。
ほっと胸を撫で下ろしたラディスは今、あの廃墟の町に来ていた。何故か、買い物袋を提げて。……買い物の時、やはりこの格好(ショーの時に着用するスーツ)とだけあって視線が痛かったが、仕方ない。私服での外出は休日といえど危険だ。
「えーと」
ラディスは辺りを見回しながらゆっくりと町を歩く。
彼が探しているのはもちろん、あの少年だ。が、別に手柄を独り占めする為に探しているわけではない。ま、彼の人柄から想像はつくと思うが。
「らですっ」
声。ラディスはくるっと振り返る。
そこにいたのはゲーム&ウォッチだった。口元には微かな笑みを浮かべ、片手を大きく振っている。ラディスも釣られてくすっと笑った。
「……おまたせ」
上方が平坦な瓦礫の上に腰を下ろし、とあるノートに目を通す。
隣でじっと見つめているゲーム&ウォッチに気付いて、ラディスはふっと優しく笑いかけた。そうだ、と思い出して、先程の買い物袋の中からある物を取り出す。
「よかったら使ってくれ」
それは真新しいノートだった。
「今日は辞書も買ってきたんだ。単語の意味と、色んな漢字が載ってる」
そう、ラディスは。
「大丈夫さ。俺が教えるから」
ゲーム&ウォッチに日本語を教える為、ここを訪れていたのである。