第六章



彼はお人好しだ。故に、とんでもなく騙されやすい傾向にある。

今となってはそれがあってはならないから、彼には単独行動を望まず自分たちがこうやって共にしているのだ。だからこそ行動の全てを許してはいけない。


――最悪の事態から逃れる為にも。


「……I Marth. How about you?」

マルスは片膝を付いて少女との視線を合わせると、声をかけた。

しかし少女は答えない。ラディスは対象的に立ち上がる。少女の視線がラディスへと逸れた。少しの溜め息。心配ないよ、とラディスは微笑し頭を優しく撫でる。

「English. Do you see?」

少女は再びマルスに視線を返した。

「A little」

そこでようやく、少女は口を開いたのだ。会話は、成立している。

つまり、言い回しによっては通じないということか。単語であればすんなりと理解してくれるようだ。難しいというか、寧ろ簡単すぎるというか。

「ま、マルス……」

当然こいつには通じていないわけで。不安そうにそう名前を呼んで視線を送ってくるラディスに、マルスはただ黙って片手を軽く挙げてみせる。

「Name」

少女はすぐに言葉を返した。

「Mr. Game & Watch」
 
 
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