第六章
踏み出したマルスをひと睨み。じっとしていろ、のサイン。
刹那、ラディスは青い稲妻を解き放った。先程のような一本の柱、ではなく幾つかに分かれて跳ねるように。それでいて地面に微かな焼け焦げた跡を残しながら、速く。直前で飛躍し、それぞれは獣が飛びかかるように。リンクに襲いかかる――
「……来た」
ずどん、と何かが衝突する音。その瞬間巻き起こる砂煙に、一部始終を見守っていたマルスは咳き込んだ。マリオは鼻を腕で庇うようにしながら目を凝らす。
リンクの目の前に背中を向けて現れたのは一人の少女。長い黒髪を風に靡かせ、ただそこに立つ。終始無言の少女はあの時と同じ。
己の影より伸びた黒い壁を用いて、稲妻を阻んだのである。
「やっぱり……」
推測は確信へと近付いた。
「君、本当は」
そう言いかけた、その時である。
少女は垂らしていた腕をゆっくりと起こして、横に払う。刹那、黒い壁は弾けて幾つかの球体になり、続けてそれらは細い針のようなものに変化すると、全員がラディスに襲いかかってきたのだ。――ここにきて少女は仕掛けてきたのである。
「え、あの、ちょっと待っ」
ラディスは顔を引き攣らせる。元より、そんなつもりはなかった。
「っぎゃー!?」