第六章
運が良かったのか、それとも。
「ありがとうございます」
ラディスは頭を下げた。
「警備中なのに案内までしてもらって……」
「いやいや!」
バーナード氏は苦笑を浮かべて。
「別に警備というわけでは……」
「えっ?」
怪訝そうに返したが、その直後バーナード氏のすぐ後ろの廊下に別の懐中電灯の光が差したのが見えてリンクが袖を引いた。ラディスは振り返る。
「行きましょう」
続けて、バーナード氏は微笑んだ。
「私はここで警備しているよ。戻ったら扉を三回ノックしてくれ」
まさか裏口まで案内してもらえるとは。それも、他の警備員に見つからないように注意を払って。今日はどちらかというと助けてもらってばかりである。
「迷惑をかけてばかり、の間違いでは」
「そ、そうとも言う」
「かけるのは迷惑どころか苦労に心配にお腹いっぱいなんだけど」
ぐさぐさとラディスの背中に突き刺さる言葉の数々。こうかはばつぐんだ!
「おーい。事実だからってやめてやれよ」
「君も楽しんでるじゃないか」
徹底して弄り倒される男、ラディス。