第六章
「私服で抜け出すなんてどうかしてるんじゃなぁい?」
マルスだけじゃない。呆れたように言い放ったカービィの傍にはマリオとリンクの姿もあった。ラディスが苦笑いを浮かべていると、リンクはずいと接近して。
「何を考えてるんですか。そういった身勝手な行為が迷惑だってこと、いい加減気付いてください。遊びじゃないんですよ。もし見つかったら」
「そんなことは分かってるさ」
ラディスは強かな瞳で視線を返す。
何となく、安心した。リンクは様々な場面で強く出過ぎる癖がある為、今ので彼が気を落としてしまうのではと思ったからだ。こうやって四人が追いかけてきたのも、責め立てて無理矢理部屋に連れ戻すのが目的だったからではない。
何せその瞳が訴えている。――彼なりの考え。そして、確かめたい何か。
「ラディス」
歩み寄ってきたマリオがそう呼んで軽く手を挙げた。顎をしゃくるのでラディスは恐る恐る、同じように手を挙げる。ぱん、と控えめな音を立てて。
「――選手交代」
それは互いの手のひらがぶつかり合った音だった。
「こっから先は俺じゃない。お前がリーダーだ」
ラディスは少しだけ目を丸くする。
「限界まで信じてやる。だから」
すぅ、と息を吸って言い放つ。
「迷うなよ」
彼らの言葉には何度助けられてきただろう。自分が安心して前に踏み出せるのは後ろにいる仲間たちのお陰だと。そう、胸を張って言える――
「だからって本当に迷わないでくださいね」
「ま、その時は僕が空から道を探してあげる」
「DX部隊のリーダーが方向音痴なんて情けない話だよ」
「俺より年上なのになー」
この余計なひと言さえなければ。