第六章
冗談抜きで何処にあるんですか。
そういえば自分、方向音痴ってレッテルを貼られていたような……
こんなことではいけない。しっかりするんだ! こういう時は警備員に聞けばいいのだろうが、生憎の素顔である。ラディスは廊下を歩きながら、溜め息。
次の角は右だろうか。そう思って曲がろうとした、その時。
「見つけた」
突如として背後からそう囁かれたが刹那、口を塞がれてそのまま後ろへと引っ張られた。抵抗する間もなく、ラディスの体は暗い闇の中へ。
「……ふむ」
警備員の男は懐中電灯を使って廊下を照らしだした。他の警備員とは違う足音が聞こえた気がしたのだが、やはり自分の足音が反響していただけか。気を取り直して見回りを再開する。……廊下に響く、靴音がだんだんと遠退いていく。
「っふは」
そこでようやく塞がれていた口を解放された。ラディスは、その人によって物陰に隠れさせられていたのである。あのまま行けば鉢合わせ、ラディスは間一髪助かったのだが。もちろん、それが見知らぬ相手というわけではないのである。
「全く。君はどうしても学ばないみたいだね」
呆れたように溜め息を吐く。その正体はマルスだったのだ。