第六章
――ここはラグナの町にある少し洒落たホテル。
「スタッフの者から連絡があった。雇った人間が突然ショーを抜け出したと」
マスターはにっこりと笑って。
「どういうことか説明してもらおうか」
予感的中。できれば外れてほしかった。
ちなみにこれは特殊な通信機器で、通信を受け取ればその相手の姿が青い光に浮かび上がるのだ。同じものを使えば互いの姿を確認し合える。ただし、常に充電していないとすぐに電源が落ちてしまう為室内での使用推奨なのが非常に残念。
「……ターゲットを見つけんだ! ショーの最中だけど」
「だろうな。だが、与えられた仕事がそれだけだと思うなよ」
ですよねぇぇぇ!
「で、そいつは捕まえたのか」
「いや逃げられた」
「それだけ揃って抜け出しておきながら。収穫とは言えないな」
心に刺さるようなことをぐさぐさと。
肝心のショーの方は、クロガネ役の人が上手いこと締め括ってくれたらしい。というわけで客の方から苦情が飛んでくることなく、無事終了。ヒーローが悪役に助けられることになるなんて。ああ、なんて礼をすれば。間抜けな話だ。
「……まあいい」
マスターは息を吐き出して。
「二日目にしては悪くないテンポだ。そこは評価してやる」
そして机に頬杖をつき、にやりと笑った。
「せいぜい頑張るんだな。……バトレンジャー」