第六章
広場を抜け、すぐ近くの小さな森へ。ぐんぐん奥に入っていく。
変だな。この森を抜けた先には何もなかったはず。あるとすれば、それは遥か昔に戦争で滅んだ町だけだ。今は荒廃して人っ子一人いないし、建物も殆ど崩れてしまい全くの手付かず。噂では瓦礫を全て取り除き、森として再生させるとか何とか。
「っ、あれ」
ラディスは走る速度を少しずつ緩め、遂に立ち止まった。辺りを見回す。が、見当たらない。……どうやら見失ってしまったらしい。
「ラディス!」
びくっと肩を跳ねさせる。慌てて振り向くと、ようやく追いついてきたマルスが膝に手を付き、息を弾ませていた。次第に呼吸が整ってくればきっと睨みつけ、早足で接近。次の瞬間にはラディスの胸ぐらを掴んで引き寄せた。
「本っ当に君は……僕が恥を忍んで演じたショーをよくも……」
「す、すみませんでした……」
影を差したその顔の迫力ときたら。ラディスも思わず敬語になるほど。
「やっと見つけた……!」
遅れてマリオ、カービィ、リンクがやって来て。そういえば全員、ショーを途中で抜け出してきたのでバトレンジャーの衣装のままなのである。自分のせいとはいえ、あまり人に見られたくない格好だ。白を基調にしているので目立つのである。
「そんなに役が自分に合わなかったってわけ」
「そ、そうじゃないんだ」
ラディスは森の先を見遣る。半分ほど走ってきたのでもうすぐ出口だ。
「まさか、見つけたのかい?」
「……多分」
「ちょっとそれどういう」
「ストップストップ」
詰め寄るマルスとカービィを引き離して、マリオ。
「……つまり、確証はないんだな?」
「とんでもない人ですね」
「っでも、確かに変な能力も使ってたしそれに」
「だからって。勝手に動かれたのでは訳が違います」
リンクがそう言い切ると、ラディスは視線を落とした。
「……すまない」
空気が沈んでいる。カービィは深い溜め息を吐き出して。
「このまま引き返すのもあれだし、行ってみる?」
「でも、この先って確か」
「せっかくここまで来たんです」
ラディスは顔を上げる。リンクはふっと笑った。
「収穫がなかったらパフェの一つでも奢ってください。……リーダー」