第六章
「ちょっとー」
ようやく回復したらしいカービィ、のっそりと体を起こして。
「あんたがそんな弱気でどうすんのさ」
「全く。面倒な依頼を引き受けてくれたね、君は」
マルスが言うとラディスは遂にずぅんと音を立てて藍色の重たいオーラを纏いながら肩を落とした。隣のカービィがマルスを肘で小突く。
「基本的に依頼は断らないんだよ。根っからのお人好しだから」
ああ、とマルスは納得。
「DX部隊もだいぶ名を上げてきたからなあ」
「顔も割れているでしょうし、受けた以上は隠し通すしかありませんね」
期限は一週間。外部から来た人間は如何なる理由であっても、滞在日数は限られているのである。ここまで厳しいとなると、正体を明かされた後が怖い。
「顔を隠す手段としては納得いかないけどな」
落ち込むラディスに構わず、マリオはすぽっとヘッドフォンを被せる。
「こういうヒーローものって何故かバレませんよね」
「子供が突っ込んじゃ駄目っしょ。そういう設定なんだから」
「まっ、よくある大人の都合ってヤツだな」
するとリンクは背景にキラキラとしたエフェクトと花を咲かせて。
「面倒臭いですねぇ。大人って」
「笑顔でさらりと毒を吐くなこいつは」
「すいませーん。そろそろスタンバイお願いしまーす」
先程のスタッフの男が顔を覗かせる。
「ほら、切り替え切り替え」
マリオはラディスの腕を引いて立たせ、ぽんと背中を叩く。
「それにしても、本当にその“死神”が現れるんでしょうか」
「んふふー。もしかしたらあんたを攫いに来たりして」
「やめてください訴えますよ。脅迫罪で」
ラディスは小さく息を吐き出して。遅れてテントを後にした。……